誰が手に負えるのか

松尾式自分探索

なにか、グッとくるものを書き記したい

日本中、そこかしこでダラける愚鈍な男どもからは畏怖され、日本中、そこかしこで秋の風になびく麗しの乙女に尊敬されたい。あわよくば惚れられたい。私の軽妙洒脱な文章に心を盗まれたと言うなら、責任をとるのもやぶさかではない。

妻はいい。妻は、私がよく働き、金を納め、花を買ってやって、罵詈雑言の的になり、家を建て、子を授かり、また働き、全ての責任を担い、たまにブランド物のバッグを買ってやって、またその分を働き、さらに余剰のお金を納めるだけで、幸せになってくれる。

「私は、そんな欲深い女ではありません」

と妻が主張するから、

「では、どの部分を勘弁して頂けますか?」

と尋ねたら

妻は、しばらく考えてから文机に置いたa4ノートに書きだした

「定期的に褒めること、もっと頻繁に旅行に連れて行くこと、欲しいゴルフクラブの型番、こまめにヒゲを剃ること、安物のシャンプーを買うこと…」

勘弁するどころか、どんどんと書き足していくので、私は恐ろしくなって逃げた。

しばらく、外を歩いた。秋の気持ち良い風を全身に感じ、清々しい気持ちで夕日を眺めた。秋の夕日は哀しく赤い。やがて夕日は沈み、月が目立つ。秋の月は大きくて丸い。

心落ち着けて家に帰ると、妻が私の書斎の文机に突っ伏していた。書いている内に寝入ってしまったのだなと思って、毛布をかけようとして覗き込むと、妻は狂った機械のようにまだ書き続けていた。

「話を盛っちゃいかんよ君」

そう言う君は、女を知らんだろう。

書くか書かないかは別として、書き出したら止まらないほどの欲を抱えて生きているのが女である。

「俺の女はそんなんじゃないよ」

そう言う君は「俺の女」について何も知らないと私は見る。

悪い事は言わん。

手に負えなくなる前に逃げろ逃げろ。