ぼくは、自分のことをあまりこだわりのない人間だと思っていたけれど、そうでもないらしい。
偏屈、とまではいかないようだけれど、柔軟な性格でもないようだ。
ぼくの服の選び方には、ちょっとした癖がある。
癖といっても、ぼくからしてみれば当然のルールに従っているだけなのだけれど、他人から見ると、そのルールを設けること自体が奇妙らしい。
ぼくは、自分のライフスタイルと関係のない服を着ることができない。
これは、とくにTシャツに適用されるルールだ。
サーフィンをしないから、BILLABONGの服を着れない。目をひくデザインの良いTシャツがあっても、でかでかとBILLABONGと印字されていたら、買わない。
「いや、サーフィンしないからな……」
THE NORTH FACEの服も買えない。マウンテンパーカーとか、着たいけど、手にとると勝手に口が動く。
「いや、登山しないしな……」
アクセサリーなんかでも、ドクロのネックレスとか、着けれない。
「ドクロ……身につける理由がないよな」
十字架も、
「魔除け……」
たとえば六角レンチのネックレスなんかがあったり、ラップトップのネックレスがあったら、迷わず買うと思う。
昔はそんなこと気にしなかった。
高校生のころ、BILLABONGにハマったし、社会人になったばかりの頃はノースフェイスの服をよく着ていた。
あの頃は、ロゴがでかでかとプリントされていても気にもしなかった。
だから、各カルチャーの流行っている服を着たことはあるし、良さは知っている。
良さは知っているのに、自分のライフスタイルと関わりのないカルチャーのロゴを背負えなくなった。
でも、もともと服はなんでも好きだから、高島屋でもアウトレットでも、一通りの店には入る。
ロゴを背負えないだけで、どんなジャンルの服でも好きは好きなのだ。
ただロゴが背負えない。逆に言えば、ロゴさえ小さければ、どこの服だっていい。
ノースフェイスなんかで、ロゴの小さい、デザインの良いTシャツを見つけると、歓喜の声をあげる。
手に取って、
「これどう、これどう?」
と、妻を呼ぶ。喜びのあまり声はテノールになっている。
ノースフェイスのTシャツってステキだ。流行るだけあって、シルエットはキレイだし、つくりが丈夫で長持ちする。
一着、とっても気に入っているノースフェイスのTシャツがある。
ショートスリーブエアリーポケットティーと言う名前らしい。
肌触りがドライで着心地がむちゃくちゃ良い。もう二年くらい着ているけれど、日焼けもまったくしないし、首もともヨレない。
追加でもう三着くらい買おうと思っている。
なにより、ロゴが目立たないのが素晴らしい。
胸ポケットにさりげなく縫い付けられているだけ、渋い。これくらいが良い。