もしも妖艶な美女が私を羽交締めにして、
「貴方は、今後一生、珈琲しか飲んではいけません」
とせがんできても、なんら苦労はしない。それくらいに、珈琲が好きだ。
たとえ激しい運動をして、喉がカラカラになったとしても、キンキンに冷えたブラック珈琲なら、スポーツ飲料水の如くグビグビと飲んでみせる。
ホットなら、家で豆をバリバリやって作った珈琲の味が格別だ。罵詈雑言を撒き散らす妻の声も遠のき、私を癒してくれる。
時々、原点復帰をしてやらないと座標の狂っていく機械のように、たまには自分の情緒を原点に復帰してやる必要がある。珈琲を飲むという行為がそれだ。
仕事中は、仕方なく缶珈琲を飲んだりもするけど、やっぱりもう少し良い珈琲でないと、情緒を整えるには至らない。
美味しい珈琲とは何か、Sophia(ソフィア)だ。それはコメダ珈琲店にあるアイス珈琲だ。
美味しい珈琲の条件がある。まず第一に、舌触りが丸いこと。美味しい珈琲は、口に含み舌に触れると、丸みを感じる。
「何を言っているんだ」
と馬鹿にした君、Sophiaを飲んでみなさい。
そして第二に、後味である。苦味、コクは後味で感じるべきものと私は思っている。珈琲の味は、飲み下した時に口に広がるものである。
この、後味でくるべき苦味やコクが、口に含んだ瞬間にきてしまうのが、缶珈琲の残念である。
その点、Sophiaは完璧だ。飲み下すと、喉から鼻に珈琲の香りが立ち上ってくる。口に含んだ時の優しい舌触りも、舌の温度に温められてその旨味成分が揮発し出すのであろうか、後から舌全体をSophiaが優しく包む。
Sophiaがある限り、私はコメダ珈琲店に通い続ける。