ベーグル(bajgiel)
まったく、旨味のないパン。
原料に牛乳、卵、バターを使用しないので、生地そのものは小麦の味しかしない。
わざわざ茹でてから焼くため、もっさりとした食感で食べにくい。低GI・低コレステロール・低脂肪とうたわれているため、女性が思考停止状態で食べる。
しかし、たいていのベーグル、特に女性が好んで食べるベーグルにはフルーツや生クリームが入っていたり、チョコレートがコーテイングされている。またはその全てがトッピングされていることも珍しくない。
そのため、ダイエットには適さない。ドーナッツより優れている点を見出すことは極めて困難である。
(T.マツオニール. 日本の女性の食べ物辞典. ヨロツパ翻訳出版. 2003. 880p)
女性の団結力には脱帽するほかない。
彼女らがなぜ男に結婚を迫るのか、それは男の口を封じるためである。
もともと男は、女からしてみればまったく歓迎のできない言葉、つまらない言葉を無神経にペラペラと喋ってしまう生き物である。
ただし、そういった男の特徴は、妻を持つとたちまちに消える。
結婚生活を守るため、まともな男はみんな、結婚した後は苔のむすまで沈黙する。
妻を、結婚生活を、守ると誓った男は、決して女性の興をそぐような発言はしないものである。
よく躾けられている。と、言っていい。
家庭に真剣な男は、妻がそばにいなくとも、女性らの評判を落とすような発言はしないものだ。
「一人の女が結婚すれば、十人の女の評判が守られる」と古来より言い伝えられているのはこのためである。
しかしいつの世にも、自らの危険をかえりみずに、真実を叫ぶ者がいる。イギリスの偉大な作家、T.マツオニールもその一人である。
彼は1995年から2001年にかけて、日本の女性の食文化を研究した。その研究結果をまとめた「日本の女性の食べ物辞典」(Japanese women’s food dictionary)は、膨大なフィールドワークを基にしたT.マツオニールの鋭い分析、卓越した筆力が評価され、瞬く間に世界中で翻訳された。
日本の女性の食文化を、イギリス人ならではのユーモアを持って巧みに批判した彼は、日本の男性のみならず、世界中の男性から熱烈な支持を得た。
しかし同時に、彼は世界中の女性から敵視されるようになった。
執拗なイヤガラセに追われながら、彼は安住の地を求めて世界を旅する。
2022年、故郷から遠く離れたインドで修行僧として彼はその生涯を終えた。
この記事の最初に引用したのは、私の手元にある「日本の女性の食べ物辞典」のベーグルについての解説である。
たしかに鋭い分析である。
私の妻も名古屋に行くたびに三千円ほどベーグルを購入する。
ベーグルに対する彼女の信心は恐ろしい。
金遣いも食いっぷりも、まさに思考停止状態である。
ベーグルにかじりついている時の彼女の目はどこかうつろである。
T.マツオニールほどの勇気を持たない私は、ただただ見守るばかりである。