計算してみる

新しい「お疲れさま」

グラム単価で考えると、ポルシェよりふりかけの方が高い。と、聞いたことがある。

初めて聞いた時には、検証もせずに「なるほどな」と頷いた。

今や僕もデータで語るビジネス万太郎である。ちょっと計算してみた。

ふりかけの王者のりたまは、25g梱包で130円。グラムあたり単価は5.2円。

グラムあたり5.2円と思えば確かに高い。1グラムと言えば1円玉の重さだ。そう考えると、なんだのりたま、君は高級食材じゃないのか。

さて、ポルシェである。

ポルシェらしい形で、値段も低めのグレードを選んでみた。718カイマン9,480,000円。

きゅうひゃ……。高ぇえ。

2シーターのくせに高すぎる。

計算すると718カイマンは、グラムあたり6.95円である。

や……安い。

ポルシェの718カイマンは、のりたまよりもグラムあたり1.75円だけ高い。

なんだか718カイマンがお買い得に見えてきた。今すぐ買わなければ損な気さえしてくる。

ポルシェとのりたまが、グラムあたり1.75円の差額。ポチってしまいそうな己をおさえてもう少し落ち着いて計算してみる。

じゃあポルシェ718カイマンは25g梱包のりたまの何袋分なのか。

25グラム梱包ののりたまが72,923袋分である。とてつもない量だ。

365日3食ずっとのりたまを食べ続けて約27年分である。

正直に言ってもうわからない。ポルシェが安く思えてきた。

27年間、毎日のりたま3食の生活を諦めれば2シーターのポルシェ718カイマンのオーナーになれる。

もしも、この記事がキッカケとなってポルシェを購入した友人がいたら、僕はその友人にのりたまを1kgくらいプレゼントしよう。

学生の頃に比べると、今の金銭感覚ってやつはどうもおかしい。

あの頃は一日500円もあれば、朝から晩まで友人と笑っていられたのに、今では5,000円から10,000円は一日であっさり飛んでいく。

妻が好んで飲むスターバックスだって、一杯で700円はザラである。

700円といえば、文庫本が一冊買える。

たとえば妻のために「トール抹茶クリームフラペチーノノンバニラシロップエクストラパウダーエクストラホイップウィズチョコレートソース」を買ってやっても、彼女はズーズー吸って5分もかからずに飲みほす。

そのお金で北杜夫の「どくとるマンボウ航海記」を買えば、三時間は楽しめる。

自分にとって基準となる数字を持つことは、人生を豊かにするうえでとても大切なことだろう。

近頃の僕は文庫本一冊800円を基準に生きている。

外食するときも、文庫本何冊分かで考える。

文庫本を諦めた分だけ食事を楽しめたか。で、いい買い物だったかどうか判断する。

昔と比べると、僕たちの生活はずいぶんと変わった。

U-NEXTやNetflixに誰でも加入している。月額1,000円くらいが基準だろう。

僕が学生の頃、映画やドラマに毎月1,000円も払っている人はあまりいなかった。

ゲオで毎月10本もDVDを借りる友人は珍しかった。

音楽も同様で、毎月1,000円も音楽のために払っている友人はあまりいなかった。

僕は音楽を集めて友人のウォークマンに入れてやっていたから、そのあたりの周りの変化がとても不思議に感じる。

高校生の頃には、友人のウォークマンのあんなちっさい画面に、エッチなビデオを入れてやったこともある。(あの時の恩、忘れんなよ)

(……、エッチなビデオの件は、三年くらいで時効らしいから書いた)

僕は学生の頃から映画にも音楽にもかなりの金額を費やしていたから、今はなんでも信じられないくらい安く感じる。まるで極楽だ。

最近は映像コンテンツなんかに興味のなかったはずの友人が、安いからと配信サービスに加入し、人生のかなりの時間をそれらに奪われている気がする。

こういうのを、価格破壊。と言うのだろう。話の合う友人が増えるのはいいことだけれど、なんだかなと思う。

わけのわからぬ間に金を払って、あっという間に生き方を変えられてしまう。

みんな、いつ自分の生き方が変わったのかもわからない。

わけもわからないうちに、あらゆるコンテンツに人生を侵略される。

侵略されないために、あらゆる基準となる数値を常に頭に入れるべきだろう。

そして、行動を起こす前に頭の中で比較することだ。

妻との結婚までのステップバイステップは、まさに侵略的であった。しかも、状況を正確に把握できるほど、僕の頭は成熟していなかった。

(前頭葉の成長はなんと25歳くらいまで続くのだ)

あの頃は結婚生活に対して基準となる数値を持っていなかった。

結婚生活を維持するには、金銭的にも体力的にも精神的にも、ガールフレンド換算10人分くらいのエネルギーが必要になる。(まったく冗談じゃない。本当に)

結婚してから毎日、妻の機嫌をうかがいながら比較している。こっちで良かったのかと。

逆に言えば、ガールフレンド10人分くらいのエネルギーと金額を一人の女性に費やしているわけである。

そう考えると、なんだか妻がすげえぇいい女に思えてくる。なんてったってガールフレンド10人分くらい愛されているわけである。(贅沢者め)

どんなことでも、数値にしてストーリーをつけて考えてみれば、良いようにも悪いようにも言えるようになったのは、僕がいっぱしのビジネス万太郎になった証拠だろうか。

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