手をふるいてここより去れば鼻水垂らして私が泣く

桜が小さな可愛い花で全身を包み、スギの木が凶悪な花粉をまき散らす3月に、私は己の鼻水に溺れながら叫んだ。

我很胖(ウォヘンパン)!

私は太った!

我要减肥(ウォヨウジェンフェイ)!

痩せる必要がある!

桜の花と一緒に芽ぐんだ私の志は、桜の花と一緒に散っていった。桜の方は花が散っても新緑が美しく残るが、私の身体には脂肪が残った。脂肪はあまり美しくない。

昔からダイエットが苦手だ。

走ることにとり憑かれていた高校生時代の私は体脂肪率が一桁であった。しかし、それはダイエットで手に入れた肉体ではなかった。ただ体を鍛え続けた結果であった。食事制限なんぞまったくしていなかった。むしろ食べることが正義であり、食べないことは悪であった。炊飯器を器にしてご飯を食べていたほどだ。

何故ダイエットが苦手なのか。

理由はハッキリしている。太ってもあまり気にならないからだ。お腹が出る。あごと首がつながる。それくらいのことで私は動じない。動じないが故にダイエットが成功することはない。

私というポンコツを操縦するには、少々のコツがいる。太っても気にならないが、衰えるのは嫌だ。「お腹、出てきたね」そう言われてもなんとも思わないが、「腕、細くなったね」そう言われると落ち着かない。その日の晩から腕立てふせに夢中になる。

私はストイックとは無縁である。どうしようもなく好きなことしかできない。だから食べることを我慢できない。お酒も我慢できないし、珈琲もキャラメルポップコーンも我慢できない。それと同じくらい走ることが我慢できない。私の体型は好きの比率で変化する。

社会の激流に飲まれるとしばしば自分の大好きを見失うことがある。

疲れた身体にムチ打って走ることが好きだった。珈琲とキャラメルポップコーンの食べ合わせが好きだった。怒り狂う妻を笑顔にするまでの過程が好きだった。二日酔いを恐れずにお酒を飲むことが好きだった。

毎日同じように生きているはずなのに、ほんの少しの忙しいが私の好きなことを忘れさせる。

走る苦しさと、その苦しさを喜ぶ自分を思い出せたのは幸運だった。

心を亡くすと書いて忙しいという漢字になるらしい。

忘れたくないことを大切にするためにブログを書いて十稿目になった。

面白いよと感想をくれた友人の皆ありがとう。

君たちに笑ってもらうのが私の一番の大好きであった。

それは今も変わらない。

一番の大好きを忘れたくはないから、なるべく頻繁にブログを更新するよう心がけている。

このブログを読んでくれている友人の諸君。君たちの好きの中に私の阿保な話を聞くことが含まれていたら幸いだ。

諸君の多忙な日々に、少しばかりの懐かしいと面白いが届くことを願う。