その女、お喋りにつき

ハーゲンダッツよりも期間限定のパフェを

男には、沈黙の時間が必要である。男性脳は、右脳と左脳の連携が遅く、感じたことを言葉にするまで時間がかかるそうだ。簡潔にまとめて、結論から話す能力を得る代償に、ボーッとした時間を確保して、脳に出来事を整理させる時間が必要になる。この時間を確保しないと、情報を整理できなくなってしまう。

逆に、女性脳は右脳と左脳の連携が頻繁らしい。つまり、感じたことを言葉にするのに時間を要しない。その代償に、感じたことをどんどん言葉にして口にだしていかないと、ストレスが溜まるそうだ。心理学の世界では、女性が一日のうちに言葉にしなければならない単語は二万語と言われているらしい。

我々男の側から見て、無駄に見えるお喋りは、一日二万語のノルマを達成するためであり、そこには効率的な情報交換だとか、論理的に考えて解決策を見出したいだとか、そういった目的は皆無である。だから、女が喋りだしたら、とにかく邪魔をしないが得策である。それが、男には難しいのだが。

妻はよく喋る。右脳と左脳の連携がいささか頻繁すぎるらしく、失礼があれば即座に罵詈雑言が飛び出るし、かと思ったら、壮大な夢を語りだす。たいてい、ロクな夢ではない。私が苦労すること明らかな冒険の計画をこんこんと語りだす。

普通の女が、一日に二万語も口から吐き出さないといけないならば、私の妻は一日に四万語から六万語は、口から吐き出さないといけない。

ある穏やかな日曜日に、私は珍しくも予定がなかったので、何を思ったか突然に

「今日は一日、妻の言葉、感情を全て受け止めてやろう」

と勇んだことがあったが、阿保であった。

妻と向かい合ってお喋りを始めた。

「なんだか今日は、たくさんお話を聞いて頂けるみたいね」

と妻は嬉しそうである。

五千語あたりまでは順調であった。一万語を越えたあたりで、私はしきりに喉が渇くようになり、何回も水を飲んだ。一万五千語で、手が震えだし、二万語では重い倦怠感が身体にのしかかった。二万五千語を通過する頃には前後不覚になり吐き気に襲われ、三万語を目前にして、失神した。

妻は幸せそうに、失神した私に話しかけ続け、累計五万語にも及ぶ単語を吐き出したそうだ。そして、一息ついてから何事もなかったように夕飯の支度を始めたらしい。

とにかく、男は女が話し始めたら、ふんふんと頷いてやって、テキトーな相槌をうって、無難にやり過ごすべきである。女のほうも、男が話を聞いていなくても、気にせず話し続ければよい。

お互いの脳の違いを理解して、勝手気ままに生きるのが、家庭の平和に一番である。