スプラトゥーン3を買った

スプラトゥーン3を買いました

結局、できることをコツコツやるしかない。なんの話か、もちろん「スプラトゥーン」の話だ。

仕事にやられ、妻にやられた僕は、どうにもあのゲームが欲しくなった。中学生の頃のように頭を空っぽにする必要に駆られた。僕は仕事を終えて帰宅するとすぐに、オンラインで「スプラトゥーン3」を買った。

スプラトゥーンは、塗り絵で陣取り合戦をするゲームで、多種多様な塗り具を武器にして戦う。インクを発射する銃や、自身よりも大きな筆を振り回す。チームは四人一組で、十人十色ならぬ四人一色だ。同じ色の四人が一蓮托生してステージを自分色に染めようと駆け回る。

三分間、インクでインクを洗う死闘を繰り広げて、最終的にどれだけステージを自分色にしたか、その比率で勝敗が決する。これが、「ナワバリバトル」だ。この一試合三分というお手軽さが、多忙な僕が購入に踏み切った理由でもある。

ナワバリバトルの勝敗によって、ポイントが付与され、ポイントを基にして、自分にランクがつく。

ある程度のランクまであがると、「ウデマエ」が数値化されるより過酷なゲームに参加する権利を得る。

まだ、自分のウデマエを試す段階にも至らない僕は、諸先輩方にくっついて、ピコピコと床を塗っている。人に向かって撃つ余裕なんてない。

少しでも自陣からはみ出せば、敵の乱れ撃ちにあい、瞬く間に屈辱の相手色に染められてしまう。全身を卑猥なピンク色に染られた日には、あまりの屈辱に涙した。

そんなヘナチョコでも、床をペチペチと塗って、戦う先輩方の後方から援護射撃をしていると、敵を倒せることがある。塗った面積で勝敗が決まるので、殺生に価値はないのだけれど、倒された敵は自陣のスタート地点に戻るし、敵を倒した地点は、また敵が来るまでは塗り放題になるわけだから、気持ちがいい。

初心者むけの水鉄砲のような武器でしばらく戦っていたのだけれど、ユーザー名は弓矢の名手「那須与一」を倣って「ヨイチ」にしてしまったので、今では弓タイプの武器を使っている。

遠目から敵を見据えて

「この矢、はずさせたもうな」

と心で祈念してから、矢形のインクを射るが、ことごとく射損ずる。射損ずるとたちまち敵がこちらにやってきて、僕の身体を、バケツやローラー、その他の非人道的とも思える塗り具で塗りつぶす。

塗りつぶされる度に、

「武器がいけないのさ」

と誰にでもなく弁解をして、他の武器を手にしてみるけど、けっきょく実力が実力だから、ぺちぺち床を塗るしかない。

そうしていると、ヨイチという名前の責任感が膨らんできて、気づけば下手な弓を射ている。

下手な弓でも、楽しくて仕方がない。下手だから、楽しいのかもしれない。

三分間だけならと買ったスプラトゥーンも、何戦も続ければ一時間、二時間と時間を溶かす。

時間がもったいない気もするけど、最近は元気がなかったから、こういうのも良いなと開き直っている。