社会に出て働いているなら、誰でも何かしらの問題解決を要求される。職種は関係ない。
昔の僕は、どのように問題を解決すればいいか分からなかった。最近、問題解決について、新入社員に教育できるレベルにくらいにはなったかなと思う。
だから、その一部を少しずつ、コマメに整理して書いておこうと思う。
読者も増えてきたことだし、問題解決について悩んでいる人がいるかもしれない。
それに、他人の考え方の型に触れるのはそれなりに楽しい体験であると思うから、好きな人は読んで楽しめるのではないだろうか。
僕は内心では自分のことをデザイナーだと思っている。
世間から見たらどう見てもエンジニアだけど、スキルがそちらに偏っているだけで、姿勢は常にデザインを意識している。
こういった話をブログに書くのは初めてだから、慣れ親しんだエンジニアリングを題材に話を始めてみる。
会社が1500万円を投じて、時間3000個の製品を完成品にする機械を購入したと仮定してほしい。
それ以前の設備では、時間600個しか生産できなかった。
つまり1500万円を投じて、設備の生産能力を5倍にしたわけである。
これは儲かる!と思いきや問題が生じる。
取引先からの要望で、製品は20個ずつ箱に入れてくれと指定される。
試しに作業者にやらせてみる。バンバン飛び出てくる製品をキャッチして箱に詰める。
20個詰めたら、箱を作業台から下ろして、新しい箱を用意する。
どう頑張っても、1時間で1000個の製品を箱に詰めるのが精一杯だった。
作業者が時間1000個しか箱に詰められないのに、機械を動かし続ければ、製品はたちまちに溢れる。だから機械も作業者に合わせて止めるしかない。
1500万円を投じた機械の生産能力は時間1000個になってしまった。
予定の1/3の能力ではとても設備を償却できない。
50過ぎの真面目な作業者は言う「 20個に一回、機械を止めるしかありませんね。だいたいこんな機械買わなくてよかったのです。」これだと何も解決していない。能力は時間1000個を前後する。
パートの中年が言う「 箱に詰める人を増やすしかないですね。単純計算3人は必要です。」人件費もタダじゃない。
やる気に満ちあふれた新入社員が前向きな意見を言う「自動で箱に詰めるロボットを買いましょう」前向きではあるが、そのロボットにいくらかかるのか、誰が操作できるのか、箱に詰めたあと、箱の入れ替え作業は人とロボットの協働で安全か?この新人にそれらの評価はできない。
中堅エンジニアが言う「こんな機械を見たことがあります。製品を滑り台で箱まで流して、20個の製品が箱に入ったら、滑り台を3秒ほど封鎖、その3秒の間に箱を入れ替える装置を作りましょう。もちろん滑り台を封鎖している3秒間も機械は生産を続けます。だいたい60万円くらいでできると思います。」
このエンジニアには、3秒あれば箱を安全に入れ替えることができる経験的な確信があり、60万あれば十分という見積もりもできている。
これなら上司も喜んで金を出すだろう。
会社の目的は利益をあげることであるから、見積もりまでできるエンジニアがいて初めて話がすすむ。
作って損した。ではいけないからだ。
では、管理職の問題解決はなんだろうか。
何もかもひっくり返すのが管理職の問題解決だ。ひっくり返せないならエンジニアの意見を採用する他ない。
「取り引き先と話をつけてきたよ。大きな箱に1000個入で入れて納品できるように話をつけてきた。何もしなくていいよ。大きな箱に1000個入れよう。」
立場やスキルによって発想の限界がでる。
上司がエンジニアの意見を採用したなら、取引先が20個詰めを絶対条件にしたのだろう。
新卒の意見が採用されたならエンジニアが社内にいなかったのだろう。それでは追加の投資が止まらなくなる。
パートの中年の意見が通ったのなら、人件費が安く抑えられる見込みがあり、とりあえずそれで逃げておこうとなったのだろう。
50を過ぎた作業者の意見が通ったのならこの会社は10年も続かないだろう。
会社の良し悪しは君の上司の良し悪しだけでは決まらない。自分もまた会社にとって重要な人材のうちの一人だと責任を持たないといけない。
もしもタイムマシーンがあったなら、他責思考であった昔の自分に、空手チョップをお見舞いしたい。