恥の多い生涯を送って来ました。
ぼくは人間失格とまではいかなくとも、いつだって落第生であったと思う。
学校で進級できなかった。という話ではない。
友人として、恋人として、子どもとして、落第生だった。
合格点とか、最高得点とか、一度だって獲ったことがない気がする。
ギリギリ平均点。だいたい赤点。そんな人生だったんだろうなと思う。
結婚してからの夫としての振る舞いも、採点したら、きっと平均点もとれないんじゃないかな。と思う。
もちろん、これは愚痴なんかじゃなくて、病んでるわけでもなくて、励ましてほしいわけでもない。
平均点にとどかない僕を、親友と呼ぶ友人がいるし、可愛がってくれる先輩もいるし、好きになってくれた女の子だってけっこういたのだ。
その中の一人は妻になってくれた。
こと人生においては、落第生の魅力ってやつも捨てたもんじゃないのかもしれない。
「黒歴史」の多い人生であった。と自負している。
「むちゃくちゃ恥ずかしい過去の自分」だらけである。
でも、この「黒歴史」ってやつが好きでたまらない。
じゃあそれは黒歴史とは言わないよ。と他人は言うかもしれない。
いや、本当に黒歴史なんだ。信じてほしい。ほんと、思い出しただけで顔は赤くなるし、枕に顔をうずめて「うわあああ」って叫びたくなる。そんな黒歴史が好きなんです。ぼくという男は。
小学生の頃からずっと、自分の失敗とか恥ずかしい話を笑い話にして、積極的に披露していた。だからだろうか、黒歴史が好きなんです。
黒歴史のおかげでたくさんの人を笑わせてこれたから、黒歴史を嫌いになれるわけないんです。
それに、ちょっと歳をとったからだろうか。たとえば学生時代の自分の黒歴史なんかは、「必死で可愛いな」なんて思えてしまう。
あの頃の僕は、いつだって自分に自信がなかった。
思春期の間、ずっと家庭はくちゃくちゃだったから、大人になるのが怖かった。
可愛いガールフレンドができても、自分の家には呼べなかった。相手の家に行くしかなくて「たいせいの家に行ってみたい」なんて言われても、テキトーにはぐらかしていた。
大学に進学しないでくれ、と親に頼まれていた。勉強は嫌いだったけど、けっこうショックだった。
それで工業高校に入学して、けっこう大きな会社に就職して、祖父の会社に転職して、取締役になれて、社会人大学生として芸術系の大学で学べて、ってルートは今思うとベストだけど、当時はけっこうキツかった。
好きな女の子ができるたびに、いい家庭の、ちゃんと高校から大学にいくような男にとられると思っていた。
自信がなかったから、勉強以外のことはなんでもした。
大人になってから、友人の話なんかを聞いていると、みんな黒歴史が少ないんだな。と思うことが増えた。
みんな、自信があったんんだろうな。と思う。当時、僕はまわりから自信家だと思われていたように思えるけど、自信があるやつは黒歴史なんて作らない。
あの頃は、何かしていないと、自分が大人になった後の人生も滅茶苦茶になってしまうように思えて、必死だった。
人生に、余白ができるのが怖かった。
余白ができるのが怖かったから、なんでもして、なんとか余白を塗りつぶしていた。
ただあの頃は、手持ちの筆記用具が鉛筆しかなくて、ページは真っ黒になるばかりだった。
それが、ぼくにとっての黒歴史だ。
でも、ぎっしり真っ黒に塗りつぶしてきたページが、大人になってからけっこう役に立っている。
プログラミングができて、設計ができて、電気配線ができると、なんとロボットが作れる。
絵だって描くし、ベースだって弾く、恋だってたくさんしてきたから、妻を笑顔にしてあげられる。
黒歴史を肴に、友人と酒だってのめる。
たくさんのことができるようになった今の僕は、鉛筆しか持っていなかったころの僕とは違う。
けっこうキレイな配色で、毎日を彩れるようになったのだ。
最近は、カラフルで、余白だってちゃんとある小洒落たページばかりになってしまった。
まだまだ若くいたいから、ちょっとくらい黒歴史が欲しいな。って思う。
このブログもたくさんの文字で埋めて、ちゃんとした黒歴史にしたい。